グリーン・アントレプレナーシップ研究寄附講座

お知らせ

2024年12月20日 グリーン・アントレプレナーシップ授業 第6回 CDP Worldwide-Japan ジャパン・マーケットリード松川氏の講義を開催しました

1.概要

 2024年12月20日(金)、京都大学経営管理大学院「グリーンアントレプレナーシップ」講義の第6回目を開催しました。今回は、CDP Worldwide-Japan ジャパン・マーケットリードの松川恵美氏をお迎えし、ネットゼロ社会への移行 ~CDP質問書から読み解くリスクと機会の考え方について学びました。ファシリテーションを務めたのは、木村客員教授と澤邉教授。両氏の進行の下、CDPの取り組みとそれに関する業界全体の課題について活発な議論が繰り広げられました。

  • 現在の取り組みなど

 まず、CDPとは、2000年に英国で設立された国際的な環境非営利団体であり、「人々と地球にとって、健全で豊かな経済を保つ」ことを目的として活動されています。測定できないものは管理できないという考えの下、情報開示の重要性を述べられました。そして、企業サイドが、開示疲れにならないように配慮しながら約20年にわたり、環境データの開示から行動を促す仕組みづくりに取り組んできました。

 その情報開示の仕組みとしては、まず、回答を要請する要請元は、機関投資家、サプライチェーンメンバー(顧客企業)、銀行・自治体などであり、CDPは、環境に関する質問書を作成し、情報開示プラットフォームを提供した上で、質問書への回答を基にスコアリング・分析を実施します。そして、回答要請を受けた企業側は、その回答をするだけで情報開示が完了し、その結果、企業競争力を強化できるなどのメリットを享受できるというものであります。また、一つの回答が、多くの場面で使用でき、例えば、情報開示の場面、データ・ツール・分析の提供者、サステナビリティデータの最終ユーザー、サステナビリティデータの最終的な使用などもできるというコメントもありました。

 コーポレートガバナンスコードの流れもあり、CDP質問書が急激に増加し、日本企業が世界で一番回答しているという状況ですが、2021年10月にTCFDが気候移行計画のガイダンスを発表し、日本企業は、情報開示のその先へ、1.5℃に整合する社会における戦略を考える必要に迫られています。この気候移行計画について、どういうソリューションが考えられるか、アントレプレナーシップ論としてとても大切であるとのご意見をいただきました。また、サプライチェーンが果たすべき役割も大切であり、サプライチェーンからの排出量を考えることも視野に入れなければならないとのことでした。その際に、例えば、どこかで人権問題が起こっていないかなどの配慮もきめ細やかに行う必要があるとのことでした。

 後、サステナビリティ情報の開示を要求する国際的な動きも重要であるということでした。世界からやや遅れているものの、日本においても、2027年以降SSBJ基準を法的義務として段階的に適用予定ということでした。

  • アクティブラーニングとしての質疑応答

 講義の後半では、木村先生から質問が受講生に投げかけられ、グループワークを経て、活発な質疑応答が展開されました。CDPのスコアリングに関する点や、気候移行計画による移行リスクか現状維持の物理的リスクのどちらをとるかという点から各グループより様々な意見が出ました。それに対して、松川氏から丁寧な、かつ、詳細なご回答があり、質疑をした受講生が、そして、その他の受講生の理解がさらに深まる質疑応答となりました。また、講義の最後の方に、CDP質問書から読み解く機会としては、受講生から、それは企業側の戦略に使え、企業文化の醸成あるいは教育的観点からも有効なのではないかという意見がありました。

4.総括

 講義の最後には、山田教授から、以下のコメントがありました。本講義では、第1回目から今日までの議論において、グリーン分野に関するビジネスの視点を徐々に大きくしていった上で、今回は、制度の問題に対峙しました。そして、当該問題は企業側と社会要請とのせめぎ合いであり、どのように当該問題に対する社会課題を解決していくかが鍵となるという示唆的なコメントをいただき、本講義は締めくくられました。

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