アート・コミュニケーションデザインと
組織経営寄附講座
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2025/1/28(火)演じて学ぶ経営ケース:演劇的手法によるケースメソッドワークショップ が開催されました。
2025年1月28日火曜日 13:15~14:45、京都大学本部構内 総合研究2号館3階演習室1にて、「演じて学ぶ経営ケース:演劇的手法によるケースメソッドワークショップ」を開催いたしました。
【イベント実施の背景】
本イベントは、公益財団法人野村マネジメント・スクールの助成を受け、「身体性を伴って学ぶ経営実務家教育―演劇的手法によるケースメソッド学習プログラム開発」の一環として実施されました。
従来のケースメソッド学習では、経営者としての意思決定を分析的に考えることに重点が置かれがちで、実際の経営判断に伴う感情的な葛藤や、関係者の多様な視点が十分に反映されにくいという課題がありました。これに対し、本研究では、演劇的手法を活用することで、学習者が身体を使って状況を体感し、登場人物の感情や関係性をより深く理解できるプログラムの開発を目指しています。
演劇的手法は、身体を動かしながら架空の世界を生み出し、その中で特定の役割を演じることで学習を深める方法です。この手法を取り入れることで、ケースメソッド学習においても、登場人物の表情や動作、時間経過による状況の変化をリアルに体験しながら、より実践的な意思決定のプロセスを学ぶことが可能になります。
本イベントでは、この演劇的手法を取り入れたケースメソッド学習プログラムの実践を行いました。

【イベントの様子】
本イベントでは、ケース教材として「ビームスの企業改革におけるコミュニケーション」を用い、経営判断に伴う感情的な葛藤を体験的に学ぶワークショップを実施しました。このケースは、ファッション小売業である株式会社ビームスがコロナ危機を乗り越え、未来に向けた改革を進める中でのコミュニケーションや組織体制に関する意思決定について扱っています。
イベントは、劇団衛星の紙本明子氏のファシリテーションのもと、アイスブレイクとして「人間マトリクス」の実施から始まりました。
このワークで参加者は、教室のX軸を「ビームスの店舗への親しみやすさ」、Y軸を「ファッションへの関心度」と設定し、それぞれ自分の立ち位置を決め、移動しました。
その後、異なる価値観を持つメンバーが集まるように調整し、「商品開発部門」「事業管理部門」「販売部門」の3チームに分かれ、トランプを用いた方法で、各参加者に年齢や組織改革への賛否のスタンスがランダムに割り振られました。
*参加者の人数によっては、意思決定を行う「社長・役員」も参加者が行うことも想定されていますが、今回は蓮行特定准教授、牧野成史教授が「社長・役員」を務めました。

ワークショップは以下の流れで進行しました。
1.部門別ディスカッション:チームごとに組織改革に対する意見を整理。ファシリテーターからは「この段階では必ずしもチーム内で意見を一致させる必要はない」と強調されました。
2.部門間意見交換:他チームと意見を共有し、質疑応答を実施。
3.役員向けプレゼン準備:部門間の議論を踏まえ、チームごとにプレゼンの準備を行う。
4.拡大役員会議:各チームが役員に向けてプレゼンテーションを実施。
5.意思決定と発表:役員が最終的な決定を下し、発表。
特に部門間の意見交換では、ある参加者から、割り当てられた年齢や立場を踏まえて「自分は定年が近いため、これまでのやり方を変えたくない。」といった意見が出され、それを無視することができないという議論に広がりました。また「ここで組織体制が変わってしまうと、今の私たちがせっかく立てた業績はどうなってしまうのか」という意見が出るなど、それぞれの参加者が与えられた役割に則って、自分ごととして考察をしている様子が伺えました。
その後、プレゼンテーションを経て、役員の意思決定に対する反応として、参加者から驚きや共感の声が上がる場面もありました。
これらの反応は、与えられたケースを単なる机上のシミュレーションではなく、実感を伴うものとして捉えていたことを示していると考えられます。
このように今回のプログラムでは、経営の合理性を追求するだけでは見落とされがちな“関係者の感情や葛藤”にも目を向け、より多角的な議論を展開することができました。
ご参加いただいたみなさま、ご来場ありがとうございました。

